誰にも届かなかった「ただいま」

止まったままの部屋
ひとりで亡くなられた方の部屋に入ると、
生活が止まった瞬間がそのまま残っています。
流しに置かれたままの食器。
めくられなくなったカレンダー。
玄関に揃えられた靴。
その方が最後に「ただいま」と言った日から、
誰にも届かない時間だけが、
静かに残っているようにも感じます。
これは、 私たちが現場で何度も見てきた風景です。
警察庁が初めて公表した数字
2024年、
自宅でひとり暮らしのまま亡くなった方は、
全国で7万6,020人。
そのうち約5万8,000人が65歳以上でした。
さらに、亡くなってから8日以上
経って見つかった方は、約2万1,800人。
これは、警察庁が初めて公表した数字です。
つまり、この国では、これほど多くの人が
誰にも気づかれないまま亡くなっていた。
にもかかわらず、
その実態すらこれまで正確に
数えられていなかったということです。
先進国の中でも、日本はトップクラス
日本では、孤独・孤立の状態にある高齢者が、
推計で約1,092万人いると言われています。
先進国の中でも、
日本は社会的に孤立している
高齢者の割合が高い国のひとつです。
血縁、地縁、ご近所づきあい。
かつて当たり前にあったつながりは、
少しずつ細くなり、やがて切れ、
誰にも気づかれないまま時間だけが過ぎていきます。
倒れても、助けを求めても、声が届く相手がいない。
「終わった後」ではなく「終わる前」に
遺品整理は、すべてが終わった後に呼ばれる仕事。
本来であれば、
必要とされないほうがいい仕事でもあります。
だから、私たちは現場だけに留まるのをやめました。
地域の高齢者への声かけや自治体や福祉機関と
連携した見守りの取り組み 。
生前整理をきっかけにしたご本人やご家族との対話。
「亡くなった後」ではなく「生きている今」に関わりたい。
孤立した高齢者をなくす社会へ
私たちは、孤立した高齢者をなくす社会を目指しています。
きれいごとに聞こえるかもしれませんし、
遺品整理の会社に何ができるのかと思われるかもしれません。
私たちに社会全体を変える力はないかもしれません。
それでも、目の前のひとりに気づき、声をかけ、
つながりをつくることはできます。